KWサスペンションシステムの特徴といえば耐腐食性に優れたinox-lineや高い強度を誇るスプリング、さらには実走行だけでなく膨大なデータ収集が可能な7post rigを駆使したセットアップなどなど...多くのポイントがありますが、今回はKWサスペンションの象徴のひとつでもある減衰力調整機構の技術をご紹介します。
減衰力とはご承知の通り「走行時ショックに掛かる負荷をコントロールする力」ですが、KW社のサスペンションシステムはここでも独自の高い技術が注がれています。
KW車高調でまず「おっ!」と感じていただけるであろう、伸び側と縮み側の「個別減衰力調整※」。これはツインチューブ構造のダンピング技術により成せる業で、モノチューブに比べ乗り心地が良いとされているツインチューブシステムに重点をおいて開発を行っているKW社の強みです。(一般的に、サブタンクの無いモノチューブ式の減衰力は、伸び側・縮み側が同時に変化します)伸び側と縮み側に別々のバルブを設け、それぞれの減衰力を個別に調整することで幅広いセッティングを可能にしており、「今日は1人でドライブだからスポーティに!」「今日はデートだからコンフォートに!」例えばこんな用途に応じた乗り心地やハンドリングをより細かく求めることができるのです。
〈※減衰力が個別調整できるモデルは、V-3、Clubsport 2-way、Clubsport 3-way〉
また、固めのセッティングにて走行中、急な段差による衝撃で同乗者に「ごめんね。(別に悪くないのに!)」...なんて場面よくありませんか?こんな日常的に起こりえるシーンに対応すべく、減衰力を高めた状態の走行でも、段差などで強い負荷がかかった場合にバルブが瞬時に開き “一時的に減衰力を弱め乗り心地を確保する” という革新的なバイパスバルブ技術も有しています。
特許をも取得するこれら独自の技術が、最高峰と称されるKWサスペンションの減衰力調整機構を支えています。
伸び側バルブテクノロジー
V-2、V-3、Street Comfort、Clubsportはピストンロッド先端にある調整ダイアルを回すことにより、簡単に減衰力調整が可能です。(一部車種はロッドの中に組み込まれた特殊ダイアルを採用)
一般的に伸び側の減衰力は、低速度域でのハンドリングと乗り心地の良さに影響を与えると同時に、車体の振動を制御しています。伸び側の減衰力を調整することにより、ドライバーが感じる快適な乗り心地と走行安定性を、思い通りにセッティングすることが可能です。
セッティングが「ハード」時のオイルの流れ
ピストンロッド先端のダイアルを締めると、バルブ先端のバイパスオリフィスが閉じ、オイルは内部を通過する事ができません。流れるオイル量が制限される為、ストロークスピードが低速の状態から減衰力を最大限に発生します(グラフ赤線参照)。減衰力の特性は、ピストンバルブに内蔵されたコイルスプリングのセッティングにより、決定されます。
セッティングが「ソフト」時のオイルの流れ
ピストンロッド先端のダイアルを緩めると、バルブ先端のバイパスオリフィスが開き、オイルはロッド内部を通過する事ができます。流れるオイル量が増える為、ストロークスピードが低速の状態では減衰力の発生が抑えられ、高速になるにしたがって徐々に立ち上がるプログレッシブな特性となります(グラフ青線参照)。バイパスオリフィスを流れるオイル量(黒矢印)は、ピストンバルブに内蔵されたコイルスプリングのセッティングには影響されません。
縮み側バルブテクノロジー
V-3、Clubsportはダンパー下側のダイアルを回すことにより簡単に調整が可能です。
一般的に縮み側の減衰力は、ターンインの時など車両が沈み込む際のステアリングレスポンスや、路面の追従性やグリップ力など限界域での安定性に影響します。
伸び側の減衰力と連動ではなく、縮み側の減衰力を独立して調整できることで、セッティングの幅が大きく広がります。
セッティングが「ハード」時のオイルの流れ
図上)ピストンロッドがストロークがしていない状態。中心部のバイパスオリフィス、ブローオフバルブとも閉じています。
図下)通常の走行時(ストロークスピードが遅い時)は、ブローオフバルブは閉じたまま、ストロークスピードに応じたオイル量が中心部のバイパスオリフィスを流れ、減衰力を発生します(黒矢印)。段差などで急激なストロークをした場合、ブローオフバルブが開き、流れるオイル量が増え瞬時に減衰力を弱めます(黒矢印+白矢印)。開くタイミングは、バルブに内蔵されたコイルスプリングのプリロードにより決定されます。
ダンパー下側のダイアルを締めると、ストロークスピードが低速域で減衰力が瞬時に立ち上がる特徴的な特性となります(グラフ赤線参照)。
セッティングが「ソフト」時のオイルの流れ
図上)ピストンロッドがストロークがしていない状態。中心部のバイパスオリフィスは開いていますが、ブローオフバルブは閉じています。
図下)通常の走行時(ストロークスピードが遅い時)は、ブローオフバルブは閉じたまま、中心部のバイパスオリフィスの開き具合に応じたオイルが流れ、減衰力を発生します(黒矢印)。段差などで急激なストロークをした場合、ブローオフバルブが開き、流れるオイル量が増え瞬時に減衰力を弱めます(黒矢印+白矢印)。開くタイミングは、バルブに内蔵されたコイルスプリングのプリロードにより決定されます。
ダンパー下側のダイアルを緩めると、ストロークスピードが低速域で減衰力の立ち上がりが緩やかな特性となります(グラフ青線参照)。