グリーンヘルが牙をむいたあの伝説級レースより1年。今年のニュルも最後の最後に劇的なドラマが待ち受けていた

ニュル24h観戦スタイル

 ─暑い。
 これがニュルでの第一印象だ。聞けば、今年は近年稀に見る好天だそうで、気温も随分と高めらしい。例年のように天候の変化を気にするというよりは、タイヤなどダイレクトに影響が出るパーツはもちろん、室内の温度上昇のため体力面でも気の抜けない24時間になりそうだ。
(終盤この天候が運命を大きく左右するとは、このときは知る由もない)

 そんな過酷なレースに参戦するのはおおよそ160台...いつ聞いても圧巻の数字だ。バンピーな路面に加え、エスケープゾーンが殆ど皆無なトラックをハイスピードで一斉に駆け抜ける。マトモな神経の持ち主では到底走ろうとは思うまい。ただ、この“マトモじゃない”ことが人々を熱狂させる。現に今年も20万人を超える大観衆がレースを観戦したという。

ニュル24 マンタイポルシェ911 GT3R(911号車)

 そしてその熱狂を演出してくれるマシンの半数以上(83台)がKWを装着しているのだ。
 総合優勝を狙う、マンタイポルシェ911 GT3R(12号車、59号車、911号車)やファルケンポルシェ911 GT3R(44号車)、他にもクラス優勝に挑む強者たちの足元をKWが支えている。
 なぜ毎年こんなにも驚異的なシェアを生み出すのか─。
 それには前述の911 GT3R(マンタイ)が、ホモロゲーションされている事実を見逃せない。ひとことで表すなら、KWテクノロジーがポルシェに認められているということになるからだ。
 さらには過去8度KWを装着したチームが総合優勝を飾っているという実績、そして妥協を許さない徹底されたモノ造り、これらがプロフェッショナルからプライベーターまで圧倒的な支持を集める要因であることは間違いない。

ニュル24h SGC003C(704号車)

 さて、レースはというと...驚いた方も多いのではないだろうか。
 なんと、ワークスサポートを受けるSP9クラスのGT3勢を抑えSP-XクラスのSGC003C(704号車)がポールポジションを獲得したのである。VLN(ニュル耐久シリーズ)と予選の結果で選ばれたトップ30によるスターティンググリッド決定アタックで、唯一8分15秒台を叩き出す堂々の結果だ。何を隠そう、このSGC003C(704号車)のアシもKWなのだ!当然我々も期待に胸を膨らませ、スタート前のグリッドウォークで熱い視線を送る。うーん、それにしても人が多い...。
 他にも、マンタイ911 GT3R勢が8番手(59号車)、11番手(12号車)、15番手(911号車)、さらに12番手にSGC003C(702号車)と、KW装着マシンがまずますの位置にいる。ファルケン911 GT3R(44号車)が25番手と少し後方に感じるが、ここはニュル!昨年トップ10入りの実力を持ってすれば十二分にチャンスがある。

ニュル24h マンタイポルシェ911GT3 Cup-MR(66号車)

 しかし期待とは裏腹に、ポールを獲った704号車を筆頭に接触やトラブルなど不運が重なり残念ながら今年のSP9クラスは奮わなかった。
 だが、もちろん明るい材料はある。ニュルは、マシンの排気量などで細かくクラス分けされているが、全21クラス中12クラスの優勝マシンがKWを装着しているのだ!
 ポールを獲得したSP-Xクラスでのワンツーフィニッシュ(702号車のSGC003C、150号車のケイマン981GT4 CS)を皮切りに、SP7クラスのポルシェ911GT3 Cup-MR(66号車)、SP3TクラスのアウディTTRS2(89号車)、TCRクラスのVWゴルフGTI TCR(175号車)などなど... 数が多いので割愛するが、完走するだけで賞賛される過酷なレースにおいて半数以上ものクラスを制した各マシンの足元を支えたということは素直に凄いことだと感じる。

ニュル24h BMW M6 GT3(98号車)

 レース展開についてはご承知の方も多いと思うが、序盤でアウディR8(9号車、29号車)、BMW M6 GT3(43号車、42号車)あたりが牽引する展開となるが、夜のスティントを迎えてなお、20番手くらいまで1週差にひしめく混戦具合だ。ひとつのミスやトラブルであっと言う間に順位が入れ替わる。
 翌朝。トップ2には変動はないが、夜間前には10番手だったBMW M6 GT3(98号車)が驚異的なパフォーマンスで3番手に順位を上げた。以降、この3台が熾烈なトップ争いを繰り広げることになる。

 残り1時間半を切ったくらいだろうか。ついさっきピットを出たはず29号車が緊急ピットイン!マシントラブルなのか、頭を抱えるクルーの様子がモニタに映し出される。序盤からずっとトップを走り続けていただけに、さすがにこれはやり切れないだろうなと慮ってみるが...これがニュルなのだ。
 これにより29号車は3番手まで後退してしまう。

 残り30分を切った時点の順位は、1)9号車、2)98号車、3)29号車。どうやら今年のニュルの覇権はこの3台に絞られそうだ。そんな矢先「ん?少し雲行きが怪しい??」
 オールドコースで降雨の情報もあり、各チームでレインタイヤを用意し始めるなど辺りがざわつき始める。が、グランプリコースはドライ、ピットに入るマシンもそんなに濡れている感じは無い、「恐らく終了までは持つだろう」というのが第一感であった。

ニュル24h アウディR8(29号車)

 間もなくして9号車と29号車が最後のルーティンピットストップ。このピット判断が明暗を分けることになる。
 トップの9号車は、天候は持つと判断してスリックタイヤのままピットアウト。
 一方、29号車はトップから後退した影響か、焦りがありバタついた感じのピット作業。一瞬ピットアウトしかけたが(このときはスリックタイヤ)給油キャップが閉まっていないため急停止して再度作業する始末。しかしこのモタツキが運命の分かれ道となる...。これではどう足掻いても勝てないと悟ったのか、さらなる時間を使ってまでインタータイヤ(スリックとレインの間のようなタイヤ)に交換という大博打にうって出る。
 直後に映し出された映像に目を疑った。オールドコースの一部が土砂降りではないか!路面に川が出来ている区間もある。
 コントロールが効かずスローダウンする9号車と98号車とは対照的にインタータイヤに履き替えた29号車は超ハイスピード。絶望的な差は瞬く間に縮まり、98号車を抜き去る。さらに9号車との差を詰め最終ラップへ突入。たまらず9号車はタイヤ交換のため無念のピットイン。
 これで勝負あり─。大博打に勝ったのだ。
 スピードを落とさず快走した29号車がそのまま9号車を交わし2017年ニュルの覇権を手にした。ほんの十数分前までは意気消沈していた29号車のクルーが歓喜に沸いている姿を見て改めて思う。
 これがニュルなのだ。

 さて、昨年に続き劇的な幕切れとなった今年のニュル。KWに限っていうと、総合優勝こそ無かったものの、多くのクラス優勝を成し遂げたマシン、そして完走したマシンの足元を支えたことは大きな誇りであり、重要なファクトであると強く感じた24時間であった。
 来年もまた、KWが多くの足元を支えるであろうマシンの活躍にぜひとも注目していただきたい。

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